会社の種類

会社の種類には株式会社と持分会社(合同会社、合名会社、合資会社)があり、下表のように 会社形態に応じて出資者の形態が異なります。有限責任とは、出資者が出資額の範囲で会社債権者に対して責任を負う事をいいます。 一方、無限責任とは、出資者が会社債権者に対して無限に責任を負うこといいます。 株式会社では、出資者のことを株主といい、持分会社では、出資者のことを社員といいます。

会社の種類
会社の種類出資者の形態
株式会社有限責任株主のみ
持分会社合名会社無限責任社員のみ
合資会社無限責任社員と有限責任社員
合同会社有限責任社員のみ

株式会社と合同会社

会社設立の際によく選択されるのは、株式会社と合同会社です。どちらも出資者は有限責任を負います。

株式会社は、株主で構成される株主総会が取締役を選任し、取締役が会社の業務を執行し、株主への利益配当を行います。 取締役は、必ずしも株主の中から選任する必要はありません(所有と経営の分離)。 一方、合同会社は、出資者たる社員が自ら業務を執行します。

株式会社と合同会社の違い
株式会社合同会社
出資者(所有者)株主社員
業務執行取締役社員
代表者代表取締役代表社員
総会議決権株主の出資割合に比例1人1議決権
社会的認知度ありやや低い
定款認証代3万円~5万円
収入印紙代4万円(電子定款の場合は不要)
不要
設立登記費用登録免許税15万円~登録免許税6万円~

 費用面で見ると、合同会社は、株式会社に比べて定款認証が不要であり、少ない費用で設立する事ができますが、 株式発行による資金調達ができないため、将来的に上場を考えている場合は不向きです。 株式会社は、資金調達の面では有利ですが、株式譲渡により株主が変わる可能性があるため、 関係者だけで小規模に事業経営したい場合には不向きな部分があります。 ただし、株式会社でも、定款で株式の譲渡制限を設けることで、部外者の関与を制限する事はできます。

株式会社の種類

非公開会社と公開会社

定款で株式の譲渡制限を設けている会社を非公開会社といいます。 株式の譲渡制限とは、株式を他人に譲渡する場合に取締役会等の承認を要する等の規定です。 一方、株式市場等を通して誰でも株式を取得できる会社を公開会社といいます。

大会社と中小会社

資本金5億円以上または負債200億円以上の会社を大会社といいます(会社法2条6号)。 それ以外の会社は中小会社と呼ばれます。 これ以降は、中小会社(監査委員会等設置会社、指名委員会等設置会社は除く)について説明します。

株式会社の機関(中小会社の場合)

機関の種類

株式会社の機関は、公開会社と非公開会社で設置すべき機関が異なります。どちらも必要なのは株主総会取締役です。下表で◎は必置、〇は任意を表します。

株式会社と合同会社の違い
機関公開会社非公開会社
株主総会
取締役
取締役会
代表取締役〇※
監査役〇※
会計参与〇※

※非公開会社で取締役会を設置した場合には、監査役は必置になります。ただし、会計参与を設置した場合は、監査役の設置は不要です。 また、代表取締役は非公開会社では任意ですが、取締役会を設置した場合には選任が必要になります。

株主総会と取締役

株主総会は、会社の株主で構成される最高意思決定機関です。 株主総会の議決事項は、取締役の選任など会社法で定める事項の他、 取締役会設置会社では定款で定めた事項、取締役会非設置会社では会社に関する一切の事項です(会社法295条1項、同条2項)。

取締役は、株主総会で選任され、会社の業務を執行します(会社法384条1項)。 取締役は1人以上、取締役会設置会社では3人以上が必要です。

取締役会・代表取締役・監査役

取締役会は、3人以上の取締役で構成され、業務執行の決定、取締役の職務執行の監督を行う機関です(会社法362条1項、同2項)。 公開会社では必置の機関です。 取締役会設置会社では、取締役の互選により代表取締役を選定します。代表取締役は会社の代表権を有します。

また、取締役会設置会社は監査役を置く必要があります。 監査役は、取締役の職務の執行を監査する機関です(会社法381条1項)。監査役は、株主総会で選任します。

非公開会社で取締役会を設置しない場合、代表権については、取締役が1人であればその取締役が会社を代表し、 取締役が複数の場合は、それぞれの取締役が会社を代表します。なお、任意で代表取締役を互選する事も可能です。 監査役は任意で設置することができます。

会計参与

全ての株式会社は、定款の定めにより会計参与を設置することができます。 会計参与は、株主総会で選任されます。 会見参与の仕事は、取締役と共同して計算書類及びその附属明細書、臨時計算書類等を作成します(会社法第374条第1項)。 会計参与は、公認会計士(若しくは監査法人)又は税理士(若しくは税理士法人)でなければなりません(会社法第333条第1項)

役員の任期

取締役、会計参与、監査役などを会社の役員といいます。 役員の任期は、取締役及び会計参与は2年、監査役は4年です。ただし、非公開会社は、定款で役員の任期を10年まで延長することができます。

株式会社の設立の流れ

株式会社の設立方法には、発起設立募集設立がありますが、中小会社では 発起設立が一般的なので、ここでは発起設立について説明します。 発起設立の流れは下記の通りです。

発起人及び会社設立事項の決定
会社定款を作成
定款認証(公証役場)
出資の履行
設立時取取締役等の選任
会社設立登記申請
関係機関への届出

なお、登記申請時に、法務局に会社の代表者印(会社実印)を登録する必要があります。 そのため、スケジュールを考慮して、定款作成前には会社代表者印(合わせて会社の銀行印や角印)を発注しておきます。

定款作成

定款とは

定款とは、会社の基本事項を定めた規程で、会社の憲法とも言えます。 定款には、必ず記載しなければならない絶対的記載事項と、記載しないと効力を生じない相対的記載事項、その他の任意的記載事項があります。

絶対的記載事項

定款に必ず記載しなければならない事項を絶対的記載事項といいます。絶対的記載事項がない場合は、定款自体が無効になるので注意が必要です。絶対的記載事項は会社の基本事項なので、定款作成前に発起人会で定めます。

(1)商号
会社名を決めます。商号には、ひらがな、カタカナ、漢字、ローマ字、数字の他、ハイフン(-)、アンド(&)ピリオド(.)などの記号を使うことができます。 なお、会社の同一所在地に同一商号の他会社が存在するときは、その商号は使用できません。
(2)本店所在地
会社の本店所在地を決めます。 本店所在地は、定款で最小行政区画(市町村、特別区)まで定めればよいとされています(東京都新宿区など)。 具体的な住所は、設立登記申請までに発起人会で定めます。 設立後に本店所在地を移転した場合、同一行政区画内であれば、定款変更の必要はありません(変更登記申請は必要)。
(3)事業目的
会社がどんな事業をするのか(建設業、飲食店、出版事業など)を具体的に記載します。 事業数の制限はありませんが、主力事業とその関連事業を記載するのが一般的です。なお、許認可を要する事業については、 会社を設立しても行政の許認可を取得しないと事業を始めることはできません。
(4)設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
いわゆる資本金のことです。出資する金額またはその最低額を定めます。出資には金銭の他、現物(建物、車、パソコンなど)による出資も 認められますが、現物出資がある場合には手続きが煩雑になります。
(5)発起人の住所氏名
発起人全員の住所氏名を記載します。

※発行可能株式総数と設立時発行株式数

定款では発行可能株式総数を定めます。 発行可能株式総数は絶対的記載事項ですが、会社の登記申請の時までに定めればよいとされています(会社法37条1項)。 また、設立時発行株式数は、発行可能株式総数の範囲内で定めます。 公開会社では、発行可能株式総数の4分の1以上の発行が必要ですが、 非公開会社ではそのような制限はありません(同条3項)。資本金の額と設立時発行株式数を定めることにより、1株あたりの価額が決まります。

相対的記載事項

定款に記載しなければ効力を持たない事項を相対的記載事項といいます。 相対的記載事項が抜けていても、定款自体は有効です。相対的記載事項には次の例があります。

  • 変態設立事項(現物出資、財産引受など)
  • 株式の譲渡制限
  • 役員任期の延長(非公開会社のみ可)
  • 取締役会や監査役、会計参与の設置
  • 公告方法(定款に記載しない場合は官報になります)
  • 株券の発行/不発行(定款に記載しない場合は不発行になります)

任意的記載事項

定款への記載が任意の事項を任意的記載事項といいます。 任意的記載事項には次の例があります。

  • 事業年度(4月1日~翌年3月末日など)
  • 株主総会の招集期日
  • 株主総会の議長
  • 取締役や監査役の員数

定款は、作成したものに発起人全員の実印と、ページごとに契印及び訂正用の捨て印を押します。

定款認証

株式会社の定款は、公証役場で認証を受ける必要があります。 公証役場には発起人全員で赴きますが、発起人の都合が合わない場合は、 代理人に委任することもできます。定款認証に必要な持ち物は以下の通りです。

  1. 定款3通(公証役場提出用、登記申請用、会社保管用)
  2. 発起人全員の印鑑証明書
  3. 発起人全員の実印
  4. 発起人が代理人に委任する場合
    1. 委任状(委任者の実印を押印し印鑑証明書添付)
    2. 代理人の印鑑証明書
    3. 代理人の実印

定款認証手数料は以下の通りです。

定款認証手数料
資本金手数料
100万円未満3万円
100万円以上300万円未満4万円
その他5万円

定款認証の費用としては、定款認証手数料の他、紙認証の場合には4万円の収入印紙を定款に貼る必要があります(電子定款の場合は不要)。 また、定款の謄本交付手数料として250円/1枚がかかります。
 公証人によって定款認証がなされると、定款1通(収入印紙を貼ったもの)が原本として公証役場に保管され、 残りの2通にはそれぞれ「謄本」、「会社保存用」という朱印が付されて返却されます。 謄本は、後に法務局での設立登記申請のために使用します。会社保存用の定款は、会社で大切に保管します。

出資の履行

出資金の払い込み

発起設立では、発起人が出資金全額を払い込みますが、 各発起人が払い込む金額および割り当てを受ける株式数は、発起人全員の同意を得て定めなければなりません(会社法32条1項)。

 発起人は、各自の定められた出資金全額を、発起人が定めた銀行口座に払込みます(会社法第34条第1項)。 このときは、会社はまだ成立していないので、銀行口座は発起人個人の口座で構いません。

現物出資

現物出資とは、発起人が金銭以外の財産(不動産や車、パソコンなど)を会社に給付することをいいます。 現物出資は変態設立事項の1つであり、定款に以下の内容を記載しなければ効力を生じません。

  • 出資者の氏名又は名称
  • 出資する財産及びその価額
  • 出資者に割り当てる株式の数

また、財産の価額については、その価格相当性につき、会社の設立登記前に設立時取締役等による調査が必要になります。 なお、定款に記載された価格が500万円以上の場合には、裁判所の検査役による検査を受けるか、 弁護士や税理士等から定款に記載された財産の価額の相当性につき証明を受ける必要があります。 現物出資財産が不動産である場合には、不動産鑑定士の鑑定評価が必要です。

設立時役員の選任

発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく、以下の設立時役員を選任しなければなりません

  • 設立時取締役
  • 設立時監査役(監査役設置会社である場合)
  • 設立時会計参与(会計参与設置会社である場合)

なお、取締役会設置会社である場合には、設立時取締役は3人以上でなければなりません

設立時取締役等の選任は、発起人の議決権の過半数をもって決定することとなります(会社法第40条第1項)。 発起人は、設立時発行株式1株につき1個の議決権を持ちます。
 なお、定款で設立時取締役等を定めた場合は、出資が完了した時にそれぞれ選任されたものとみなされます(会社法第38条第4項)。

取締役会設置会社は、設立時取締役の中から設立時代表取締役を選定しなければなりません(会社法第47条第1項)。 設立時代表取締役の選任は、設立時取締役の過半数をもって決定します(会社法第47条第3項)。この他、次の方法も許容されると解されています。

  • ア 定款に設立時代表取締役の氏名を直接記載する方法
  • イ 定款に発起人の互選による旨の規定を置き、発起人が互選する方法
  • ウ 定款に設立時取締役の互選による旨の規定を置き、設立時取締役が互選する方法

取締役会非設置会社では、設立時代表取締役の選任は、上記(ア)~(ウ)の方法の他、発起人の互選によることができると解されています。 左記の方法による選定がされない場合は、設立時取締役全員が設立時代表取締役となります(会社法第349条第1項)。

設立時取締役等による調査

設立時取締役(及び設立時監査役)は、その選任後遅滞なく、次に掲げる事項を調査しなければなりません(会社法第46条第1項)。

  • ア 現物出資財産等について定款に記載された価額が相当であること。
  • イ アについて弁護士等の証明を受けている場合には、その証明が相当であること。
  • ウ 出資の履行が完了していること。
  • エ その他、株式会社の設立の手続が法令又は定款に違反していないこと。

設立登記申請

会社の設立登記申請は、その本店の所在地において、設立時取締役等の調査が終了した日又は発起人が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内にしなければなりません(会社法第911条第1項)。 登記手続は司法書士に依頼することもできます。

登記申請書及び添付書類
番号書類
設立登記申請書
登記事項を記録した電磁的記録媒体(CD-R、DVD-Rなど)。
印鑑証明書(設立時代表取締役個人のもの)
印鑑届出書・印鑑(会社の代表者印)
定款1通(公証役場の認証印のあるもの)
本店所在地(丁目番地等まで)などを定めた発起人会議事録。
役員就任承諾書(定款に記載のない役員又は発起人以外の役員につき)
設立時代表取締役を定めた設立時取締役会決議書
出資金の払込みが完了したことを示す払込証明書
10現物出資がある場合、価格相当性等についての調査報告書
11資本金(資本準備金)の額の計上に関する証明書

会社設立登記申請の際には、法務局に登録免許税を収入印紙で納付する必要があります。
登録免許税の金額は、資本金額の1000分の7です。ただし、当該金額が15万円に満たないときは15万円になります。

関係機関への届出

会社設立の登記が完了すると、法務局で会社の登記簿謄本(履歴事項証明書)を取ることができます。 会社設立後は、各種行政機関への届出の際に登記簿謄本が必要になるため、予め複数枚取得しておきます。 会社設立後の届出書類としては、以下のものがあります。いずれも本店所在地を管轄する役所に提出します。 なお、都道府県によって、提出期限や提出の用・不要が異なる場合があります野で、提出先に事前に確認が必要です。

税務署(法人税)法人設立届出書(設立日から2か月以内)
青色申告の承認申請書
棚卸資産の評価方法の届出書
減価償却資産の評価方法の届出書
税務署(給与関係)給与支払い事務所等の開業届出書(設立日から1か月以内)
源泉所得税の納期の特例の承認申請書
県税事務所(法人事業税)法人設立届出書(設立日から概ね1か月以内)
市町村役場(法人住民税)法人設立届出書(設立日から概ね1か月以内)
年金事務所(厚生年金・社会保険)新規適用届(設立日から5日以内)
被保険者資格取得届、被扶養者届(設立日または従業員を雇った日から5日以内)
労働基準監督署(労働保険)適用事業報告(初めて従業員を雇ったときに遅滞なく)
労働保険関係成立届(従業員を雇った日から10日以内)
労働保険料概算保険料申告書(同上)
公共職業安定所(雇用保険)雇用保険適用事業所設置届(従業員を雇った日から10日以内)
雇用保険被保険者資格取得届(同上)